ハワイ島の風 (2011年6月24日)
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私が一番好きな風景があります。ハワイ島にあるヒロハワイアンホテルの客室からのヒロ湾の眺望です。特に明け方がいいのです。静けきった早朝の冷ややかで湿り気のある空気、鳥の鳴き声、湾を覆っていた霧が朝日とともに晴れ渡っていく、その瞬間が最高です。その瞬間、生きていることを実感します。非日常であり、また生きて行こうと思います。そんな風景を持てたことを幸せに思います。
4年ぶりにハワイ島へ行ってきました。先月亡くなった友人の葬儀に出席しました。元ハワイ郡長スティーブン山城です。葬儀は大変な人でした。彼の友人が言うに、彼は本当に素晴らしい政治家であったと、特に行政手腕が優れていたと。しかし、私の知る彼はただただ優しく、朗らかで、はにかみ屋で誠実な男でした。
ハワイ島を訪れる度に思うことがあります。ヒロに住む日系の人々のことです。彼らの多くが日本人であることを誇りに思い、日本を懐かしみ郷愁の念を抱いています。日本に住む日本人以上に、日本にアイデンティティーをを感じ、日本の現状を憂い行く末を案じています。彼らには心から尊敬する祖父母や父母がいます。祖先を敬い家族を大切にしています。かつての日本の習慣や慣習がたくさん残っています。何の保証もないアメリカで人種差別を受けながら、懸命に生き抜いてきた彼らに、いつも勇気ずけられます。
今回、友人の花卉農園を訪ねました。4年前に比べ親父が年老いていました。友人である息子は何やら以前より、たくましくなっていました。ハワイの花卉はほとんどアメリカ本土に出荷されています。近年、アジア特にフィリピン・タイなどの安い花との競争になり、市場は厳しい様子でした。ハワイの花卉農家では廃業が相次いでいるようです。私の友人は以前より副社長というポジションですが、経営は親父の独壇場でした。最近は親父が言うことを聞いてくれるようになったと非常に嬉しそうでした。彼はこれから日本向けに出荷したいと考えていました。日本市場も同様で、アジアの安価な南洋植物が多く出回っています。ハワイの花は品質はとてもいいのですが価格が高いため苦戦しそうです。しかしマーケティングの工夫次第で売れるだろうと彼も私も考えています。彼の会社は決して大きいとは言えません。とても小さな会社ですが、古くから全米を市場として農園経営をしてきました。そしてこれから日本市場に出ようとしています。日系人特有の辛抱強さ、粘り強さ、くわえて、どんな環境下でも生き残ろうとする、しなやかさを私の友人にも感じました。
ハワイ島ビッグアイランドの風は、いつものように私を優しく包み込んでくれました。そして、私の背中を力強く押してくれました。