成功と失敗 (2011年6月30日)

敬天愛人箚記

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成功と失敗をどう考えるべきでしょうか。成功は何よりも捨てがたい最高の状態のことでしょうか。そして失敗は、このうえなく惨めで耐えがたい状態のことでしょうか。そもそも成功の反対語は失敗でしょうか。たとえば幸せの反対語は不幸です。成功は幸せ、失敗は不幸だとも言えるので、成功と失敗は反対語なのでしょうか。

私は成功と失敗はある過程における同一線上の出来ごとにすぎないと思っています。成功も失敗もたまたま何かの力によって至った状態であり、成功から失敗、失敗から成功へとどちらにも成りうるのだと思っています。縦軸に幸福度、横軸に人間としての成長度を表す図を想い描いてください。人間的成長が進めば幸福度も上がります。その線上に成功と失敗が同居しています。成功だと思っても幸福度が低いために、幸せだと思えない人がいます。失敗したのに幸福度が高く、不幸だと思えない人がいます。失敗してもやり直せばいいと思える人もいます。二度と失敗したくないので挑戦しようとしない人もいます。成功したと思っている状態がいつまでも続くとはかぎりません。成功から失敗に至る人もいます。その時に成功と失敗をどう考えるかで大きく違ってきます。成功と失敗は人間的成長を目的とした人生においてひとつの通過点に過ぎないと考えると、迷うことなく再度チャレンジすることができるでしょう。

会社を倒産させ、現在、破産者である私は明らかに失敗者です。でも今の私は本当に幸せです。地位も名誉も財産もすべて失くしました。人間関係にも傷つきました。見得もプライドもありません。そんな私ですが少しも不幸ではありません。愛する妻と子供たちがいて、心優しい親戚と心から信頼できる友人たちがいて、私は本当に幸せです。忘れていました、慢性骨髄性白血病を患っています。それでも私は幸せです。

失敗者が再起するには条件があります。家族、親戚、友人の支えが必要なのは言うまでもありません。もうひとつの条件は時間です。なんと言っても、失敗者の心は相当傷ついています。明るく振舞っていても心の中は違います。いまにも心が折れそうで、何気ないことで心が萎えてしまいます。失敗者が再起するのに絶対必要な自信が失われています。ある程度の時間が必要です。少しずつ自信をつけながら再起に必要なエネルギーが貯まるまで、相応の時間が掛かります。

今私は少しずつ自信を回復しています。70%のエネルギーが貯まったと思います。今の私の偽りのない心境は次の通りです。「明日死するがごとく今日を生き、永遠に生きるがごとく学び続ける。」(トマス・モア)