私流「断捨離」 (2011年7月6日)

敬天愛人箚記

敬天愛人語録にもどる

最近よく使われる「断捨離」という言葉があります。ヨガの断業・捨行・離行からきた言葉だと言われています。物欲を断ち、要らない物を捨て、執着心から離れるという意味です。仏教の教えそのものです。今の私の生活は、まさに「断捨離」です。私が好んだ訳ではありませんが、破産者になり、すべての物を捨てることになりました。原因はともかく、私こそ「断捨離」の実践者です。

断業はあらゆる物との関わりを断つことです。この中には人間関係も入ります。私は昨年春の倒産以来、多くの知人との連絡が途絶えました。私たち夫婦が親戚で居候をさせてもらったり、東京へ引っ越したりで、知人との連絡がなくなりました。それまで、無理をして付き合ったり、儀礼的な付き合いになっていたり、仕事上だけの付き合いだったり、いろんな人間関係がありました。会社を潰したことで、何もかもすべてリセットしてやり直そうと思いました。長年増え続けた住所録や携帯電話の登録番号を一旦リセットしようと考えました。これから、連絡は本当に会いたい、話がしたいと思える人にだけしていこうと思いました。そうして少しずつ連絡を取り始めています。これが、精神的に非常に楽なんです。今の私には人間関係で何のストレスもありません。大切な家族、助けてくれた親戚、支え続けてくれた友人たちと過ごす時間がとても幸せです。人間関係の棚卸、これもありかと思います。

捨行は身の回りの不必要な物を捨てることです。私はすべての財産を失くしました。倒産2週間前に親父が亡くなりました。親父の遺産を相続したうえで自己破産をしました。大石家代々全ての資産
を失いました。東京へ超す際には、文字通り身軽できました。妻の嫁入り道具は妻の実家に返してきました。今は妻と二女と三人家族が暮らせる家と家具があります。要らない物が無くなっただけで、何の不自由なく暮らしています。

離行は物や金への執着から離れることを言います。私は資本金総額1億8000万円、年商110億円のグループ企業を失くしました。同じ業界で再起しようとは思っていません。ましてや、以前より大きな事業をしようとも思っていません。この4月に友人の支援があり会社を設立しました。妻が代表者で私と二人だけの会社です。私一人が動けるだけ、出来るだけの仕事をしていきます。妻と二人食べていけるだけの稼ぎがあればいいと思っています。

無理をした人間関係や儀礼的なだけの人間関係を断ち、不必要な物は持たず、見得やプライドそして執着から離れる。そんな日々を送りたいと思います。思わぬ「断捨離」でした。これからは重荷を背負うことなく、身軽になって、慌てず、急がず、ゆっくりと残された人生を歩きます。今まで見えなかった物や出来事、そして出会うことのなかった人達との日常を楽しもうと思います。私は特急列車から飛び降りました。見る景色が変わりました。せっかくですので、ゆっくり歩いて行きます。