思考停止 (2011年9月14日)

敬天愛人箚記

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「それを言っちゃ、おしまいよ!」って、むかし、はやりましたよね。日常生活のなかで、その言葉を言うと、それ以上、話が進まないっていうこと、たくさんありますよね。たとえば、誰かと話していて、「そりゃ、常識やで。」っと言った瞬間に、話が止まってしまうような。それが、いわゆる「思考停止」です。実は、私たちの周りにたくさん、そんな言葉が存在します。今の世の中の膠着状態がもたらす閉塞感の一因が「思考停止」をおこす言葉かもしれません。その言葉の向こうに何があるのか、そろそろ考え始めねばならない時期が来ています。

世の中の常識や、あたりまえだと思っていたことが、実は非常識であったり、間違っていたということが多くあります。人との会話のなかで、声の大きい人や、存在感がある人が、そういう思考停止を引き起こす言葉を使うと、すべての話がそこで終わってしまいます。議論の余地など微塵も残っていません。そんな状態が常識や習慣を作っているのかもしれません。政治の世界やビジネスの世界、あらゆる場面で「思考停止」を引き起こす言葉が使われ、誰かに利用されているように思われます。

政治家がよく使うたくさんの意味不明な言葉や、滔々と語る割には中身のない話、専門用語を並べただけのストーリーの無い話には、いいかげん、うんざりさせられています。ましてや官僚が使う言葉は、はなから国民に理解してもらおうなどという配慮がありません。政治家が何か不祥事があったとき、必ず使う、「遺憾に思います。」あるいは、「不徳の致すところであります。」とは、いったいどういう意味なのでしょうか。この言葉を使うことで、それ以上の言い訳をすることなく、それ以上の質問や追求を受けることもないという、非常に便利で卑怯な言葉です。私たち国民こそ、彼ら政治家や官僚を遺憾に思っているのです。

ビジネスの世界でも、最近の会社の状況を尋ねられた時、「景気が悪いからね。」という言葉で、すべて終わってしまうことがあります。話す方は、景気が悪いことが自社の業況悪化の原因である、ということを無意識に伝えようとしています。聞く方は、心の中で、「ちがうやろ、あなたの会社が調子良くないのは、経営者に問題があるのと違うか。」と思いながら聞いているのでしょう。「景気が悪い。」とは、非常に便利な言葉です。ビジネス上のすべての問題を一手に引き受けてくれるのですから。

私たちには、気の合う人、気の合わない人がいます。相性がいい人、相性が悪い人も当然います。人間関係において、あの人とは「相性が悪い。」と言ってしまうと、そこで終わってしまいます。そう言うことで、それ以上相手を理解しようとする努力をしなくなります。完全に、思考停止による努力義務放棄です。家族のなかでも、気が合う、気が合わないということがあります。それを 「相性が悪い。」で済ます訳にはいきません。縁あって家族になった以上、互いに理解しあう努力をしなければなりません。

このように、私たちの周りには、「思考停止」を起こす言葉があふれています。これから、少しずつ、自分の周りの言葉に意識してみませんか。そうして、 「思考停止」を起こす言葉の向こうに、何があるのか考えてみませんか。常識や慣習だからと、深く考えることなく、疑うことなくきたのを、少し改めてみませんか。そうすることで、止まっていた思考が動き出し、きっと、今までにない、新しい発想が生まれます。そして、今まで考えもしなかった結論に至るかもしれません。そこから、新たな行動が始まるのでしょう。