原点回帰 (2011年10月14日)

敬天愛人箚記

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経営者ならずとも人は、よく迷い、惑います。どうしていいか判断できないことや、どう考えていいのか分からないことなど、たくさん出会うものです。そういうとき、あなたはどうしますか。私は一つの方法として、自分の判断基準を持っています。私が経営者であったとき、日々何らかの経営判断をする必要がありました。そんなとき、私はまず、経営者としてどう考えるべきか、どう判断すべきかを考えました。それで判断できない場合、男としてどう考えるべきか、どうするべきかを考えました。それでも判断できなければ最後に、人間としてどう考えるべきか、どうするべきかを考えました。そうやって3段構えで考える基準を持っていたことで、心のゆとりが出来、時間をかけて考える習慣ができたと思います。判断基準は人それぞれでいいのだと思いますが、持っておくにこしたことはありません。

もうひとつの方法は、原点に帰ることです。会社経営をしておれば、日々問題が生じます。経営者は問題の本質を見極め、どう対処するのかを判断し、行動に移さねばなりません。そのとき最も大切なことは、何よりも、その問題の在りかと原因を間違わず突き止めることにあります。問題の本質を見誤ると、間違った判断のもとで行動することになります。問題の本質を追究するひとつの方法が、原点回帰です。

社内で起こる問題はいずれも業務上の問題です。製造、運送、営業、接客などの業務を行うなかで生じた問題です。たとえば、営業上起きた問題ならば、営業という業務の本来の役割と目的を考えたうえで、何のための業務かという基本に立ち戻って考えることで、問題の真の原因が見え、どうすべきかがわかります。それで見極められないときは、会社とは何なのか、何のためにあるのかという原点に帰って、考えることです。そうすることで問題の在りかがわかり、問題解決の方法が明らかになります。

経営者は長年、同じ会社を経営し続けることで、ときとして、何のために経営しているのか分からなくなることがあります。会社を始めたころの情熱や理想、そして夢といったものなどいつの間にか忘れ去られ、気が付くと日々の業務に追われ、毎月の売り上げと利益を追いかけ、月々の資金繰りに追われています。会社経営の根幹のひとつが利益です。利益があってはじめて経費を賄え、事業を継続するための運転資金を生み出すことができます。厳しい競争のなかで、いつしか利益が減少します。気づくと赤字経営になり、利益で経費が賄えず、運転資金も借り入れるしかなくなっています。そして少しでも利益を増やそうと、少ない利益でたくさん売ろうと無理を重ねます。いつしか借入が増え、支払に支障がでてきます。そして資金ショートする日がやってきます。「会社は設立したときから資金繰りが始まる」と誰かが言いましたが、その通りです。ベンチャー企業の多くが1、2年で姿を消すのも、運転資金を調達できなかったのが原因です。経営者が会社経営の原理原則をわすれ、目的までも忘れています。

経営者はたえず原点に帰り、会社とは何なのか、何のための経営なのかを考える必要があります。経営に正解はないと言われます。しかし日々何らかの経営判断をしていかねばなりません。海図と羅針盤を持たずに航海はできません。自分なりの判断基準を持ち、たえず原点に帰ることをすれば、めったに難破することなく目的の港に着けるのではないでしょうか。