親子経営 繁盛と繁栄の秘策 父親がしてはならない7つのこと 2   己に恥じない生き様とは  (2015年10月13日)

ビジネスコラム

己に恥じない生き様とは

父親である経営者が聖人君主でなければならないということではありません。ただ現実に会社経営をするなかで、経営者には様々な誘惑と闘わねばならないときが多くあるということです。

会社を存続させるため、利益を少しでも増やすため、売上をこれまで以上伸ばすためなど、もっともな目的のため超えてはならない一線を超えてしまうことがあります。いわゆる企業不祥事の数々です。

企業不祥事のひとつが粉飾決算です。例えば2011年に起きましたオリンパスの粉飾事件がありました。バブル期につくられた損失1300億円を10年以上も歴代社長のもとで隠し続けられたという事件です。

また最近では同じように東芝の粉飾事件が発覚しました。こちらは数年にわたる業績不振を隠すために毎年のように売上過大計上、経費過小計上という手口で架空利益を上げてきたようです。その額1562億円です。

いずれのケースでも経営者はじめ不正操作に関わったすべての社員が口を揃えて言うのが「会社のため」でありました。自分たちの保身のためにした誠に無責任極まりない事件です。

彼らはみんな、会社のためというお題目を唱えながら自分がしたことを一生懸命正当化しようとしています。自分の心に疾しさを感じながらも、誰もが同じようなことをしているのだと自分に言い聞かせながら自分を納得させていたのです。

論語から一節、「子の曰く、人の生くるは直し。これを罔(し)いて生くるは、幸いにして免(まぬが)るるなり。」と、あります。私なりに読み解きますと、「人が生きるとは誠実に一本道を真っ直ぐに歩くことに他なりません。常に不誠実で不正の数々を行いながらよしんば今無事であるとしても、それはたまたままぐれで生かされているに過ぎません。」とでもいうことでしょうか。

世にある企業不祥事の数々が表沙汰となり事件となるのは氷山の一角のようなものでしょう。さきほどのような大企業では不正操作に関わる人数が多いこともあり、事件として発覚する可能性が増すのですが、中小企業ではよほどのことがない限り表面化することがありません。

しかし、オーナー企業である中小企業といえども、いずれ時間の経過とともにどこかに綻びが生じてきます。自分の代では何事も起きなかったとしても後継者である息子の時代に事が表面化するやもしれません。

この問題の本質は経営者の人間としての生き方、生き様にあります。経営者としてしてきたことが人間としてどうなのかと問われているということです。企業活動だから、ビジネスだから許されると思ってやってきたことが本当にそうなのかが問われるということです。

もっと言うなら、経営者としてしてきたことを胸を張って家族に言えるのか、妻に言えるのか、そして子供に言えるのかということです。さらに言うなら、己に恥じずにおれるのかということに尽きます。