親子経営 繁盛と繁栄の秘策 その強さと真価 2 オーナー経営者のトップ営業 (2016年2月2日)
ビジネスコラムオーナー経営者のトップ営業
多くの中小企業が業績頭打ちの状態です。これ以上どうしたら売り上げと利益を伸ばすことができるのか、皆目見当がつきません。営業マンにノルマと成功報酬を与えるやり方にも限度があります。
売り上げ、利益を上げろと、営業マンを毎日追い立てたところで結果が出てきません。社長もどうしていいのか分かりません。挙句に朝から社長室にひとり閉じこもってああでもないこうでもないと結論が出ない思案の袋小路に入り込んでいます。
私がこれまで見てきた会社のなかで、業績がいい会社の経営者は毎日忙しく、本社にいる時間が少なく、お会いするには必ずアポイントを入れなければならないのが当たり前でした。
一方で業績が悪い会社の経営者は資金繰りと社員の尻を叩くのに忙しくて、アポイント無しで会社にお伺いしても必ずおられます。なかには1週間どこへも外出せず、ずっと社長室にいるという社長もいます。そして、いよいよ閉塞感に苛まれ、進退窮まってきます。
こんなときオーナー経営者がしなければならないことはもう一度原点に立ち戻って自らが動くということです。私の経験から言えることは、経営者が本気で動き始めれば売り上げの30%くらいはすぐに上げられるということです。
オーナー企業にとってはオーナー経営者そのものが会社の看板でありブランドです。一営業マンが動くのとは影響力が大きく違います。経営者自身、当初は営業第一線で毎日働いていたはずです。
それがいつのまにか営業は営業マンに任せるようになり、もっぱら日々社員を管理することが多くなります。そして社長室ができると朝から入ったきりで終日部屋から出ることさえ少なくなったりします。
私の事業経営者としての経験から言えば、オーナー経営者はまずプレイングマネジャーであるべきだと考えています。なおかつオーナー経営者こそトップセールスマンでなければならないと思っています。
オーナー経営者自らがセールスに出ることの効用には事欠きません。まず顧客に対するきめ細やかな対応は社員には真似ができません。また顧客との信頼関係作りにはオーナー経営者であることがなにより有利になります。
そのうえオーナー経営者が動くことでライバル会社との差別化が顧客に印象付けられます。顧客へのサービスや接待なども社員が行うのとオーナー経営者が自ら行うのとでは受ける顧客の満足度が大いに違うものです。
経営者がこうして自ら動くことで、売り上げが上がるだけでなく、社員に与える影響が少なくありません。経営者がトップセールスを行う姿を間近に見た社員が変わります。これまで、いくら声を大きくしても動かなかった社員たちの目の色が変わりはじめます。
経営者が口を酸っぱくして行動を促してもそれまで全く変わらなかった社員がオーナー経営者自らが動き始めた途端、彼ら自身の動きに変化が起こり始めます。経営者の執拗な言葉より経営者の行動が彼らを動機付けたのです。
本コラムの子供がすべき7つのことのなかでも言及しましたが、オーナー経営者がリーダーとして「率先垂範」することの意義がまさにここにあります。再度論語の一節に登場願います。
「子の曰く、其の身正しければ、令せざれども行わる。其の身正しからざれば、令すと雖(いえ)ども従わず。」とあります。
自分自身が人間として生きざまが正しかったなら命令などしなくても部下がその想いを慮って行動してくれるけれど、自分自身の行いが誤っていたなら命令をしたところで部下は誰一人従うものはいない、ということでしょうか。
オーナー経営者が自ら範を示し営業に出ることで社員の社長を見る目が変わります。尚且つ経営者自らが結果を出せば社員はもう何をかいわんやとなります。経営者が動き結果を出し続けることで社内のムードが大きく変わります。
現場を誰よりも知る経営者が開く営業会議はそれまでと一味違ってきます。誰よりも動く経営者に誰もなにも文句が言えなくなります。そしてオーナー経営者がそうやって動くことが社員に多くの気づきを与えるきっかけとなります。