幸せは不幸な出来事を装ってやってくる
ビジネスコラム「百億円企業を倒産させた私は、まさに敗軍の将である。私に残ったのは、得難い教訓であり、その後も親交してくれる友人や取引先の方々、そして何よりも家族の絆である。倒産は不幸な出来事だが、十年後の今、私は人生で最も幸せな時期を過ごしている。」
以前お伝えした私の新著のタイトルが最終決定した。
『幸せは不幸な出来事を装ってやってくる』(マネジメント社)
~父から子に伝えたいビジネスと人生の教え~
人は過去に捉われず今を生きることはとても難しい。まして過去に大きな挫折を経験していると簡単ではない。過去の自分が犯した失敗が多くの人たちを巻き込んでいたとしたらなお更のことだ。これからの人生を慎み贖罪の日々を送ろう。そう思いながらこの10年を過ごしてきた。
会社を倒産させたことで多くのものを失くすことになる。資産は勿論、多くの人間関係、さらにはそれまで築き上げてきた自分という存在を色付けてきた地位や名誉といったものまで失くすことになる。まるで自分という一人の人間がこの世界からその存在を消されたかのように思われる。
日々を慎んで生きようとするうちに気が付くと大事なものを失くしていることに気が付く。それは人が生きる上でとても大事なものだ。気が付くと私は「自信」を失くしていた。何かをやろうとしてもどうも上手くいかない。おかしいなこんなはずじゃないのに、なにかが違う。そう思っていたら、ある日気が付いた。
人生で耐え難いほどの挫折を経験することは私だけではない。結構多くの人が同じような経験をするものだ。私の周りにもいるのだが、共通して云えることは女性より男の方が挫折からの回復が妙に遅いということだ。自分でも情けなく思えるほど男はダメだと何度も思ったものだ。
さらには挫折から回復するのに結構な時間を要することになる。これも私の経験から言うと、3年は掛かると思っている。女性なら次の日からでも立ち上がっているだろう。私の場合、3年が経っても立ち直れていなかった。10年が過ぎ、ようやく吹っ切ることができたかと思っている。
人はと言いたいが、私は強い人間ではない。独りではここまで来れていなかっただろう。妻が側で支えてくれ、子供たちが近くにいてくれたからなんとか生きていられる。友人、知人、親戚の人たちが変わらぬ付き合いをしてくれたからこそ、こうして今がある。倒産、破産という出来事を経た今、私は幸せに暮らしている。
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