親子経営 社長が最も自社の問題を知っている
ビジネスコラム親子経営 社長が最も自社の問題を知っている
先日、嬉しい手紙を頂きました。私の前著『親子経営 ダメでしょモメてちゃ』を読んでご自分の境遇と共通したところがとても多く共感したとの内容でした。そして一度話を聞かせて欲しいということでした。
関西に本社があり東京に支社があるということで、東京支社で一度お会いすることにしました。アパレルメーカーで日本のみならず海外にも店舗を持ち創業60年になるということでした。
社長は私と同じ2代目社長です。これも私と同じように親父と上手くいかず若い頃は随分と悩んだようです。大手商社に勤めていたのを親父はじめ身内から帰って欲しいとの願いを断り切れず親父の会社に入社したようです。
私と同じように長男でしたから、子供のころから親父の仕事を継ぐのかなという思いはあったようです。ただ大手商社ではこれからの時代を担うであろう新規事業に携わり、これからという時期であっただけに帰るかどうかとても悩まれたとのことです。
そして帰った会社は、30億円の売り上げが10億円にまで落ち込み資金難で喘いでいる状態であったといいます。持っていた資産の売却を進めると同時に、それまでの布地販売から製品の製造販売へと舵を切ったといいます。
時代の波、流れにうまく乗り婦人服の製造販売が順調に伸びて現在に至ったとのことでした。親父の会社に入社してから無我夢中で会社の立て直しに奔走し45才を過ぎたころにようやく一息ついた感じですと言われました。
私はお会いするにあたって会社の概要をネットで見ていました。社員数700人、売上160億円という中堅企業でした。ここ数年の売り上げが160億円くらいで推移しているのが気になっていました。
後継者は子息がおり、現在大学院に通っているということで事業継承については今後の課題となります。私が社長に今現在、御社で問題、課題はなにでしょうか、と尋ねてみました。
「先生、一言で言うと、儲からんのです」と言われました。私も恐らくそうであろうと思いお聞きしました。社長が会社へ帰ってから、財務を立て直し事業の転換を果たしてきたことはすでに述べた通りです。
その後、順調に売り上げを伸ばし国内のみならず海外まで販売拠点を持つに至ったわけです。ところが多分に漏れず売り上げが踊り場に達し、160億円前後をうろうろとここ数年呈しているのが現状のようです。
当然、利益率が年々低下し最終利益が微々たるものでしかないことが予想されていました。案の定、社長から儲からないと話があったわけです。ではなぜ儲かっていないのでしょうか、と問うてみました。
「先生、在庫です。それも予想以上に多くの在庫が問題なのです。今、うちは実に年間8000種のアイテムを製造しています。一つのデザインの商品には各サイズと各色を揃えなあかんのです。それが大変なのです。それと、海外店が儲からんのです。先生、どうしたらいいでしょう」と言われました。
私が申したのは、「社長、営業利益に注目してください。海外も含めた同業他社の最も高い営業利益率を目標にしてみてください。その営業利益率を達成するためになにができるか、必要かを考えて取り組まれてはいかがでしょう」ということでした。
往々にして、経営者は自社の問題はすべて分かっています。問題はその問題を解決すべく行動しているかどうかです。社長は分かっているけどできない、できていないという方がほとんどです。
同時に社長はそれができない言い訳を数多く持っています。いつも同じ愚痴ともつかない話を多くの人に語っているのでしょう。それこそ滔々と理路整然とできない言い訳をしてくれます。
会社のことは社長に聞けばすべて分かります。これが原理原則です。ただ、本人は日々の業務に慣れ業界環境に慣れ、気づかぬふりを続けています。それを指摘し行動を促すことが私のひとつの仕事です。