親子経営 繁盛と繁栄の秘策  その強さと真価 1  オーナーシップ発動 (2016年1月26日)

ビジネスコラム

オーナーシップ発動

これまでこのコラムで同族経営、ファミリービジネスでの親子の関係性並びに親子それぞれの責任と役割について様々と述べてきました。今回からシリーズ最後のテーマとして「親子経営その強さと真価」について7回に渡り書かせて頂きます。

私がいう「親子経営」とは同族経営、ファミリービジネスなどと同様の企業形態のことです。我が国の多くの企業が同族経営であることはすでに承知のことです。昨今、学者の間でも日本の同族経営についての研究が少しずつなされています。

このコラムでは経営者の目線で自身の経営経験からみた「親子経営」の強さと弱さを考え「親子経営」の真価を問うてみようと思っています。「親子経営」の強さを語ることは同時に弱さを語ることです。

「親子経営」の強さを7つ挙げることは弱さを7つ挙げることになります。7つの弱さと真摯に向き合うことがリスクヘッジとなり、強さをさらに高めることが「親子経営」の繁盛と繁栄の秘策に他なりません。

さて前置きが長くなりましたが、第一回のテーマは「オーナーシップの発動」です。私が言うオーナーシップとは、オーナー企業経営者が企業の所有者として主体的に強い情熱と責任を持って、経営者としての経営責任と役割を果たすことをいいます。

行き過ぎた間違ったオーナーシップによる経営が起こす様々な企業不祥事は枚挙にいとまがありません。昨年世間を騒がせました「ナッツリターン騒動」、学校法人文理佐藤学園園長による法人会計の私的利用などはその典型です。

また、それ以上に問題なのがオーナーシップが発揮されていない経営が多くあることです。本来経営者がやるべき決定、決断を疎かにし優柔不断に陥っているオーナー経営者が多くいることこそが大きな問題です。

私は長年オーナー企業経営者としていろいろな事業経営をしてまいりました。その後、経営コンサルタントとして多くのオーナー企業経営者の方々とお会いする機会を得ることができました。その経験のなかで私はあるひとつのことが気にかかりました。

それは、オーナー企業経営者が会社の本来所有者であるにも拘わらず、どこか経営に対して遠慮をしているというか主体性が感じられないといったようなことでした。

言い換えるなら、オーナー経営者としての役割と責任を果たすことなく、他の役員、社員にその多くを任せてしまっているということです。会社の業績が思うように推移していないにも拘わらず、どこか他人事のような経営者がいるということです。

彼らが言います、「社員みんなに任せているから」と。社員みんなで決めたことだからみんなに任せていると言います。事業がおかしくなっているにも拘わらずそう言って手をこまねいています。

本来、事業を見直し見極めることは経営者がするべきことです。オーナー企業ではオーナー経営者にしかできないことです。正しい「オーナーシップの発動」こそが今経営者に求められています。

最後に論語からまとめて二節、「子曰く、過ぎたるは猶及ばざるがごとし。」「子曰く、中庸の徳たるや、其れ至れるかな。民鮮(すくな)きこと久し。」とあります。

私なりの解釈をしますと「なにごともやりすぎると元も子もないものだ。なにごともほどほどがいい。」「過、不及のない中庸の徳というのが望み得る最上のものだね。なかなかわれわれ凡人には出来ないことだね。」こうなります。

経営者のオーナーシップも同様です。闇雲になにがなんでも発揮すればいいというものではありません。ここぞ、これというところで過、不及なくオーナーシップを発揮することです。またなにごともやり過ぎがよくないのは言うまでもありません。

「親子経営」において経営者がオーナーシップを遺憾なく発揮することは重要なことです。オーナーシップの発揮が正常に行われてこそ企業活動が活性化するとともに業績が大きく変化をするものです。

そのためにも、オーナーシップを発揮する前提としてオーナーである経営者が人格者であり人望、人徳があることが望まれます。さらに経営者が世の中の普遍的な仕組みを知り、なにごともほどほどという中庸の徳を知っていたならもうなにも言うことはありません。