親子経営 繁盛と繁栄の秘策 子供がしてはならない7つのこと 6 人の上に立たせてもらうということ  (2016年1月14日)

ビジネスコラム

人の上に立たせてもらうということ

活躍している若い経営者や親の下で頑張っている後継者をみていると感心すると同時に本当に大丈夫なのかなと不安に思うときがあります。それは彼らが人の上に立つということの重大さに気が付いているのかと不安に思うからに他なりません。

余りにもなにか無造作に無意識に経営者として後継者として社員と接しているような気がします。人の上に立たせてもらうということはそんなに簡単なことではないのではと、はらはらしながら彼らを見ることがあります。

私が長年事業経営者として過ごしてきたなかで最も難しいと思ってきたことがまさにこのことです。どうしたら人の上に上手く立つことが出来るのかということ、言い替えるなら上手な立ち方とはいったいどのようなことかということでした。これはリーダーとしての役割と責任の果たし方でもあります。

起業してから必要に応じ社員を雇用し始め、気が付くと多くの社員がいる会社に成長してきたといった若手経営者や、父親の跡をただ継いだ結果として多くの社員を持つ会社の経営者になったといったようなケースがあります。

どちらの場合も、彼らが自分自身をリーダーだと認識しているのかという疑問が生じます。そして彼らがリーダーとしての役割を認識しその責任を果たす覚悟ができているのかが問われています。

起業を果たし経営者として自分のやりたい事業をやることだけが自分がしたいことであって社員との複雑煩瑣な人間関係、労使関係などは自分がやるべき仕事じゃないと思っている若い経営者がいるものです。

また、父親の跡を継いで経営者になった後継者が社員たちの父親に対する敬意や忠誠心といったものがそのまま自分にも向けられると本気で思っているとしか考えられないような言動に驚かされることがあります。

どちらの場合も経営者の役割の一面、それも華々しい外向けのパフォーマンスや社内での権威や特権を行使するといった一面しか果たせていないのにもかかわらず、それが経営者なのだと勘違いしているのだとしか思えません。

ここで論語より一節、「子張、仁を孔子に問う。孔子日わく、能(よ)く五つの者を天下に行うを仁と為す。之を請(こ)い問う。日わく、恭・寛・信・敏・恵なり。恭なれば則ち侮られず、寛なれば則ち衆を得、信なれば則ち人任じ、敏なれば則ち功あり、恵なれば則ち以て人を使うに足る。」

私なりの解釈をしますと、「弟子の子張が人徳、人望について孔子に訊ねました。孔子が言うに、次の五つのことを実践することができれば人徳、人望が得られるだろう、と。それをもっと詳しくご説明ください。孔子が言う、恭しくあること、寛容であること、信頼できること、俊敏であることそして思いやりがあることだ。何故なら、恭しければ誰からも侮られることがなく、寛容であれば人が慕い集まり、信頼ができれば信用され、俊敏であれば成果を上げられ、思いやりがあれば人を上手く生かすことができるからだ。」

人の上に立とうとするなら何よりも、正に孔子が言う人徳、人望がなければなりません。小手先だけやうわべだけの仕儀、仕様ではなんともならないものです。日々、社員のたくさんの目が見ているのですからどうしようもありません。

リーダーのポジションというのは人徳、人望がなければとてもすわり心地が悪いものです。常にメンバーからその一挙手一投足を見られているのですから、いつも緊張を強いられることになります。

経営者、後継者が自分には人徳、人望が無いと思うのであれば、人の上に立とうとするのではなく人の上に立たせて頂くのだという謙虚な気持ちをまず持つことが第一歩にちがいありません。