キーワードは「縮小均衡」 (2012年2月15日)
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これからのビジネスを考えるとき、一番大切なことは、今という時代をどう考えるか、どう認識するかということです。今がどのような経済環境にあるのか、そしてどこに向かっているのかということを理解しておくことが、それぞれの企業にとって、最も大事なことでしょう。そもそも、企業活動の前提として、今がどのような時代かを明確に知っていなければ、経営戦略もないでしょう。
では、今日の日本経済はどのような状況にあるかというと、「縮小均衡」に向かう移行期だということです。かつて右上がりであった経済が停滞期を経て、今現在、緩やかに右下がりの状況です。経済規模の縮小が進み、需給バランスがとれるところまでいくと、ようやく落ち着くのではないかと思われます。その後、上向くか、さらに下降するかは、私たち日本人の価値観次第ではないかと思います。
今、日本には260万あまりの法人があります。そのうち71.5%(08年)が赤字企業です。資本金1億円未満に限れば、実に78.1%(08年)が赤字企業です。しかも、5期以上連続で赤字である企業は50%もあるようです。これが日本経済の実態です。なかには税金を払いたくないばかりに、わざと赤字計上する企業もあるようですが、大半は懸命な企業努力の末での結果だろうと思います。企業の多くが、右上がりの経済成長下での黒字を維持し続けることができず、赤字に転落しています。経済成長下の膨大な供給が、今の縮小した需要に見合うまで、たくさんの赤字企業が姿を消すことになります。
最近、よく言われるように、日本の総人口が明らかに減少し始めています。問題なのは、65歳以上の高齢者人口の比率が高くなっていくことと、15歳から65歳までの生産年齢人口が減少していくということです。これが日本の内需を減少させている、一番の原因です。このような状況下にもかかわらず、政治家や官僚は相変わらず、右上がりの時代の経験から抜け出せずにいるようです。今、盛んに論議されている社会保障制度と増税の話も、彼らが想定している人口予測が明らかに違っているのですから、話になりません。増税に反対している政治家のなかには、いまだに経済成長一辺倒の方も多く見受けられます。今、明らかなのは、かつてのような経済成長はもう無いということです。今の日本経済は縮小均衡に向かって、緩やかに下っています。正しい現状認識のもとで、あらゆる政策を講じることが今求められています。30年も前に作られた社会保障制度が制度疲労をおこしているのは明らかです。当初の想定と違い、人口動向、経済動向が変化しています。今、すぐに抜本的改革を行わなければ、破綻してしまいます。なかでも年金制度はひどいものです。本来800兆円か900兆円あるべき年金積立金が150兆円しかないという事実を、国民に明らかにしたうえで、どうするべきなのかを一日も早く議論し、手を打たねばなりません。今のままでは国家による国民に対する詐欺以外の何ものでもありません。
話を企業にもどします。経営者がまず、日本経済が縮小均衡に向かう移行期にあることを認識せねばなりません。そのうえで、これからの在り方を考えることです。内需の減少が続く国内から、思い切って飛び出し、よりグローバルに生きるも良し、小さくなった国内市場に合わせた、スリムで弾力性のある小粒で引き締まった企業になるも良しでしょう。いずれの道を行くかは、経営者次第です。
現状認識を誤らず持つことが、今、すべてのリーダーに求められています。