スピーチの妙 (2011年8月27日)

敬天愛人箚記

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スピーチは面白く、楽しく、そして難しいものです。スピーチが持つ力はとてつもなく大きなものです。一国の行き先を変える力があります。リーダーのスピーチは国をも変えてしまいます。日本人のリーダーは政治家も企業人もスピーチの見えざる力をあまり重視していません。今のような混迷の時代にこそ、スピーチの力を知るトップリーダーの出現が期待されます。

スピーチのなかで、何のために話すのか明確でないスピーチほど、つまらないものはありません。ただ人前で話すのが好きだというだけで話すひとがいます。聞く人の気持ちや感情を意識することなく、自分勝手に話す人がいます。言葉だけが次から次へと口から飛び出す人がいます。内容の伴わないスピーチは聞くに堪えません。スピーチはスキルより何を伝えたいのかが大切です。

私は人前で話す時、自分の言葉で語ることを心がけています。そして、何を伝えたいのか明確にします。内容はストーリーを重視した構成にします。話す時間が3分でも2時間でもスピーチ原稿は作りません。スピーチの骨組みとキーワードだけをメモし、あとは話の流れを良くし、起承転結でまとめます。そして、何度も何度も練習を繰り返し、話が自然にスムーズに流れるまで行います。そして最後に、一つ一つの言葉に自分の想いや願いを込めて話します。自分の話す言葉に魂を乗せて話したいといつも思っています。聞いている人たちに、わたしの想い、考え、私の人生、そして私の生きざまを感じてもらえるよう、願いながら話しています。

私はこれまで、たくさんのスピーチを聞きました。スピーチにはその人の個性が表れ、その人の人となりがおのずと知れます。あるとき、スピーチが上手だと言われている人の話を聞きました。私にはどうしてもその人の言葉が頭の上を通り過ぎるだけで、何を言おうとしているのか、さっぱり分かりませんでした。残念ながら言葉がすべるように流れていました。ある人は彼のスピーチを非常に流暢だといいました。私にはただ言葉だけが流れているとしか思われませんでした。私はその人が何のために話しているのか理解出来ませんでした。人前で話すことは、その場にいる人たちと時間と空間を共有することになります。いわばその人たちの時間と空間を拝借しているとも言えます。十分な準備と練習をして臨むことが、最低限のマナーだと私は思っています。独りよがりなスピーチは迷惑でしかありません。

話すことは自分を表現することです。自分という人間を多くの人々に理解してもらうとても大切な機会です。おろそかにしてはなりません。言葉は言霊ともいいます。仏作って魂入れずの例えもあります。人前で話すときは、しっかり自分の言葉に心を込めて、言葉に魂を乗せて話したいと思っています。