トップの座 (2011年7月8日)

敬天愛人箚記

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組織においてトップの影響力がいかに大きいかお話します。昨今、ビジネス書で社員の育成・研修に関する本が多く出ています。中には、優秀な社員を育てれば会社は安泰だ、なんて極端なものまであります。優秀な社員がたくさんいても、トップの出来が悪ければ、彼らは平凡なサラリーマンに変身します。そんな例をたくさん見てきました。社員のレベルを上げる努力は当然すべきです。それ以上に、トップのレベルを上げることの方が、はるかに効率的で現実的です。

私は若い時、青年会議所(JC)でお世話になりました。JCは日本各地にあり、20歳から40歳までの地域の経済人が集まった組織です。地域の活性化と会員の資質の向上等を目的に活動しています。各地域のJCはそれぞれ独立した団体で、各年度にトップが代わり、役員、組織が変わります。毎年、新しい理事長の下で、新しい体制で事業が考えだされ推進されています。トップが代わると、面白いほど、恐ろしいほどにメンバーのモチベーションが変化します。あんな人の下ではやれんとか、あの人の為なら喜んでなんでもやろうとか、本当にいろんな反応をみせます。昨年はあれほど情熱的に活動していたメンバーが今年は何か活気がないとか。トップ以外それほど役員、メンバーが代わっていないのにムードが昨年と違うといったことが毎年起こります。

JCの良いところは、いろんな役職につくことで、自然とリーダーシップのトレーニングになることです。最も勉強になるのはトップになることです。いろんなメンバーがいるなかで、リーダーシップの取り方、リーダーの在り方を学びます。得難い貴重な経験になります。

私はこれまで、たくさんの社長を見てきました。私が若い頃、とても可愛がってくれた社長がいました。彼は業界で経営手腕を高く評価され、人物的にもとても魅力ある経営者でした。彼の会社は、彼が社長になって以来、順調に業績を伸ばしていました。社内のムードはピリリと引き締まり、常に緊張感があり、かつ活気がありました。その彼が若くして社長を辞しました。後任は一族の若い方でした。社長交代後、3日目に私は新社長にご挨拶するべく訪問いたしました。なにやら、受付から様子が変わっていました。緊張感が無くなっていました。他の部署も、3日前と明らかに違うのです。私は大変な驚きと戸惑いを覚えました。かつて、あれほど優秀な社員だと思っていた人達が、たった3日で普通の平凡なサラリーマンになっていました。空恐ろしさを感じました。

どんな組織でも、トップの交代は大きな影響があります。優秀な人材がいくらいても、リーダーがその役割を十分に果たさなければ彼らの力を生かせません。たった一人のリーダーの在り方次第で組織は如何様にも変化します。特に悪く変わるのは簡単です。緩みきった組織を活性化するのは、大変な時間と労力が必要です。

私はこれからの私の仕事として若い後継者の育成に努めます。たった一人を育てることが、多くの有為な人材を生かし、組織を活性化させ、社会貢献に資すると信じるからです。