バラ一輪 (2012年6月24日)

敬天愛人箚記

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今、新宿西口にあるカフェにいます。
初めて、東郷青児美術館に行きました。

ゴッホの向日葵が所蔵されていることで有名ですが、わたしは東郷青児の絵が見たくて行ってみました。

残念ながら青児の絵は、数点しか掛けられていませんでしたが、久しぶりに見る彼の絵は相変わらず素敵に思えました。

以前、わたしの社長室に彼の「バラ一輪」という絵が飾られていました。

30代のころ、わたしはよく大阪の新地でもよく遊んでいました。

そのころはもうバブルがはじけ株式市場の値下がりや土地神話が崩れ価格の暴落が続くようなときでした。

取引先に連れられ、あるクラブへ行ったときのことです。
席に座って周りを見て大変驚きました。

店中の壁一面に10枚ほどの大きな絵が飾られていました。
それもみんな同じ有名な画家の絵でした。

それが東郷青児の絵なのです。
わたしはその絵はリトグラフなんだろうと勝手に思っていました。

なぜなら本物だとしたら大変高価なものだと分かっていたからでした。
いくら新地のクラブでもそんなことはないかと思っていたのです。

お店のママが挨拶に席についたとき、「東郷青児の絵やね」と言ってみました。
「そう、みんな本物よ」

「これ以外にも家にまだ何枚かあるのよ」と、おっしゃいました。
「え、これみんな本物やったらすごいな」と、わたし。

「そうよ、バブルのときは一枚数千万て言われてたの。それが十数枚あったから数億円はしてたかな」と、さらりとおっしゃいました。

「そんなこというても今でも高いんとちゃうか」と、下世話なわたし。
「ま、一枚数百万やろな。あー、売っときゃよかつた」

「社長はこの中でどの絵が好き?」
「うーん、俺はそう、あの赤いバラ持った女の子の絵が好きやな」

当時、こんな話しはよくあることでした。
ゴルフ場の会員券までも投資物件だったなんて、今の若い人達には理解できないでしょうね。

それから10年くらい経って、わたしの社長室に東郷青児の「バラ一輪」が掛けられました。
その経緯はご想像におまかせいたします。

その絵も今は私の手から離れました。

今日、久しぶりに彼の絵を見ました。

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