マーラー交響曲第9番 (2011年11月18日)

敬天愛人箚記

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私の葬式ではマーラーの交響曲第9番が流れています。当日にかけるCDも指定しています。1964年、ベルリンでサー・ジョン・バルビローリがベルリンフィルハーモニーを振った一枚です。私の長女に、私の葬式でこれを流してとお願いしています。私はマーラーの交響曲が大好きです。なかでも特に第9番が好きです。マーラーが死の1か月前に完成させた曲です。実は彼自身、この曲を聴くことはありませんでした。生前マーラーは、次の作品はとてもこの世のものとは思えないほど美しい歌が連続した曲だと、友人に書き残しています。特に第4楽章アダージョは、人生の最後を癒し、讃える最高の音楽だと思われます。1964年は、カラヤン全盛時代であり、ベルリンフィルハーモニーにとってマーラーの作品自体それほど親しいもではありませんでした。バルビローリが初めてベルリンフィルハーモニーでマーラーの第9番を振ったとき、ベルリンの聴衆は感動し、それ以上に楽団員が大きな感銘をうけたのでした。そして楽団員の熱烈な要望があり、翌年改めて再演し録音したのでした。私は30種類以上の同曲のCDを持っています。そのなかで私が一番安心して、落ち着いて、音楽そのものに浸っていられるのがこのCDです。サー・ジョン・バルビローリの実力を思い知らされる一枚です。

いつの日か、私の葬儀に参列いただける方は、この私のお奨めの音楽が聴かれることになっています。式場の天井あたりで、私があの世に帰る前に、ニヤニヤしながらマーラー交響曲第9番第4楽章アダージョを聴いていることでしょう。

今から15年後私は70歳です。私は私の70歳の誕生日を祝う会を開こうと思っています。それまでお世話になった方々に一堂に会していただき、人生最後の大宴会をやりたいと思っています。慢性骨髄性白血病である私が、あと15年生きられるのかどうかは私の関知することでなく、ぜひとも楽しいパーティーにしたいと願っています。出席いただいた方々、一人一人と旧交を温め一人一人にお礼を申し上げたいと思っています。今回の人生で最後のイベントです。これからの残りの人生で、まだまだたくさんの人々と出会うことでしょう。私が死ぬまでにどうしても、もう一度会っておきたい人たちだけに集まってもらっての大宴会です。今世でお世話になり、また来世もお付き合い願いたい人との集まりです。今からとても楽しみです。みなさん、招待状が届いたなら、どうかご出席願います。

私は気が弱くなってこんな話をしているわけではありません。人生の終わり方を、自分なりにイメージしているのです。こういう終わり方しまい方をしたいと、具体的に思い描いているのです。残りの人生を一生懸命に生き抜いて、生き切りたいと思うのです。そうして、今わの際に本当に幸せな人生であったと思えるよう、今を生きたいと考えています。

「将来のために必要なものは、幸せな今」 この言葉を聞いたとき、なるほどもっともだと思いました。これは先月TVドラマ「マルモの掟 スペシャル」で、マルモが言った言葉です。今、このときが幸せでないのに、どうして将来、幸せでいられるのでしょう。大きな幸せでなくていいのです。ちいさな、ささいな幸せでいいのです。あまり、ストイックな生き方は窮屈です。将来のために今は努力と辛抱あるのみなんてのは、やめましょう。将来のため、努力と忍耐はもちろん必要でしょうが、そればかりじゃ人生つまりません。少しの小さな幸せでいいのです。将来のため必要なものは、幸せな今の連続なんです。おかげさまで、私は今、とても幸せです。幸せな人生の終焉に向けて、今を懸命に生き切ります。