自律力 (2011年12月10日)

敬天愛人箚記

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最近、企業の不祥事が相次いでいます。オリンパスの損失隠し、大王製紙の御曹司乱心などです。二つの事件内容は違いますが、問題の核心は同じです。オリンパスの事件は、当時流行りの財テクの失敗による巨額の損失隠しです。一方、大王製紙の事件は、創業家三代目オーナーがグループ会社から100億円を超す多額の金を、自分の遊興費の穴埋めに借用したという単純なものです。この二つの事件は、企業のコンプライアンスの欠如ということではなく、実は経営者の資質の問題につきると私は考えています。

オリンパスの不祥事に関わったとされる歴代社長はサラリーマン社長です。彼らの価値観、判断基準が問題の本質です。財務部門が財テクに動いたことは経営トップも了承してのことと思われます。株式投資の投機性は常識であり、損失がでることも予想の範囲内であったと思われます。問題は多額の損失が発生した年の決算に計上しなかったことにあります。おそらく、その期の営業利益をはるかに上回る損失額に驚き、飛ばしというインチキをしたのでしょう。担当者、直属上司、担当役員、社長までみんなが、自社株の株価に影響を与えるからという都合のいい言い訳をし、それぞれが責任逃れをするため経理操作したものです。担当者から社長までみんなが組織の一員でありサラリーマンです。彼らの目的は、組織を維持することであり、組織におけるそれぞれのポジションを守ることでした。当時の社長がもしコンプライアンスを重視し、適正な倫理観を持ち合わせていたなら、この事件は起こりませんでした。社長が襟を正し、正直に欠損を計上すべきでした。残念ながら、社長にその資質がありませんでした。

さて、一方の大王製紙の御曹司お不祥事は、誠におそまつでした。しかし、よくあるであろうことも事実です。大王製紙のように、祖父から三代に渡り創業家がオーナーである企業はたくさんあります。それらの企業にいつ起きても不思議でないのがこの事件です。大王製紙の御曹司は、上場企業の経営者の役割と責任など十分に承知していました。しかし、かれら創業家にとっては、会社は自分たちのものなのです。誰が何と言おうが、祖父が創り、親父が大きくした彼らの家業でしかありません。100億円ぐらい使って何が悪いと、心の底では今も思っているでしょう。また、彼の100億円は私たちの100億円ではありません。もともと金銭感覚が違います。

どちらの事件も問題の本質は、経営者の資質にありました。経営者が自らを戒め、常に私生活から襟を正し、己を磨くことに留意していたなら、このような事件はおこりませんでした。今、経営者にこそ自律力が求められています。自らを自らの倫理観に基づき、己を律することが経営者に問われています。

では、経営者が自律力をつけるのにどうすればいいのでしょうか。ひとつの方法は経営者に専属のコーチやアドバイザーを付けることです。人間だれしも聖人君主ではありません。弱さと脆さがあります。日々、経営という激務のなかで、経営判断を下さねばなりません。経営者の判断が会社の運命を決めます。そんなとき、専属のコーチやアドバイザーに話すことで、安心感、安堵感を得、精神的肉体的にリフレッシュすることが大切です。そして、自らのモチベーションを上げ、維持しながら経営にあたることが重要です。経営者はプロでなければなりません。その意味でも経営者はプロのコーチを持つべきです。