親子の事業継承の機微 (2012年3月23日)

敬天愛人箚記

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前回の話のなかで、陸上競技400メートルリレーにおいてバトンパスをする区間をテイクオーバーゾーンというと言いました。しかも20メートルと決められているとも言いました。

わたしが事業継承のコンサルティングをする際、3年掛けてやりましょうと言っているのはこのテイクオーバーゾーンを3年間とりましょうと言っているのです。

事業継承に掛かる時間はあまり短くてもいろんな問題が生じます。また長すぎると違った問題が起こりかねません。経験上ちょうどいい加減が3年間だと思っています。

わたし自身かつて後継者でした。大学卒業後すぐに親父が経営する建設資材販売会社に入社しました。当時すでに30人くらいの社員がいて年商は18億円であったと記憶しています。

わたしの親父は根っからの商売人でした。事業家でも経営者でもありませんでした。もちろん会計の知識などまったくなく、まさにどんぶり勘定の経営でした。

会社のなかの組織などあってないようなもので、各自てんでばらばらな動きをしていました。また、親父の兄弟の子供を3人も入れていました。その彼らがまた出来がよくありませんでした。

そんな会社をみて、若いわたしは一日でも早く自分が社長になって、普通のまともな会社にしようと心ひそかに思っていました。

わたしは親父が40歳のときの子供でした。よってわたしが30歳になれば親父は70歳になります。70歳といえばオーナー経営者といえども引退していいころだとわたしは考えていました。

そして、わたしが30歳になったとき、わたしは親父に社長を交代して欲しいと申し入れました。しかし、なかなかいい返事をくれません。1か月くらいほぼ毎日わたしと親父の口論が続きました。

とうとう最後に親父が折れてくれました。わたしが代表取締役社長で、親父は取締役会長ということになりました。

わたしが親父にもっとも感謝していることは、陰ではいろいろと言っていたようでしたが、わたしに引き継いだ後は、いっさいすべてを任せてくれたという事実です。

いま思えば、親父にすれば心配で仕方なかったと思いますし、社長を退いたことでの寂しさも大きかったと思います。

もう少し、優しくしてやればよかった。もう少しいろいろ相談をしてやればよかったと、いまになって悔やんでいます。

事業継承は親子なればこその難しさがたくさんあります。親子の特に父と子との相克が存在します。親子の相克を理解したうえで、経営権の引き継ぎを行わねばなりません。

事業継承の目的は円満に穏やかに経営権を引き継ぐことです。そして後継者が一日も早く一人前の経営者になることです。

後継者の育成と同じくらい大切なのが、現経営者の引き継ぐための心構えと覚悟です。経営者の心のフォローをしながら進めねばなりません。

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         大石 吉成

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